めぐるり -Megururi-

近江八幡の魅力を探求する
WEB MAGAZINE
ヴォーリズが繋いだご縁を大切に守っていく
辻 友子Tomoko Tsuji
ヴォーリズ遺産を守る市民の会 会長
目次
20年の時を経て蘇ったツッカーハウス
めぐるり編集部(以下、めぐるり)
辻さんを初めて知ったのは、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(以下、ヴォーリズ)が結核療養所として設計したツッカーハウスを保存し、一般に公開するというニュースでした。恥ずかしながら、それまでツッカーハウスの存在を知りませんでした。見学会に参加して、冬至でも部屋が明るくなるような設計や空気の循環の工夫などを知り、結核が不治の病と思われていた当時の患者の方々へのヴォーリズの想いが溢れていて、心が動かされました。

辻さん
1915年に大切な友人を結核で失ったヴォーリズは「豊かな日光、緑に囲まれた風景とさわやかな風など、神の与えたもうた自然そのものが、人間の内なる快復力を励ます」という理念を持って、あの場所にツッカーハウスを設計したんです。ヴォーリズ記念病院の歴史のスタートだったのですが、結核も時代とともに治る病気になっていきました。すると、結核療養所としての役目を終えて、一般の病院になっていたんですね。そして、現代は終末医療の役割が重要になってきて、ツッカーハウスを取り壊してホスピスを建てる計画が進行していると知ったんです。

本当に壊してしまっていいんだろうか。ヴォーリズの精神というか、なにか大事なものが失われてしまう気がして、保存活動を始めました。20年くらい前でしょうか。そこからは本当に少しずつ。瓦を屋根から下ろして、当時の院長さんや、市民ボランティアの方たちと綺麗にしたり、建物を補強したり。たくさんの方の協力があって、やっと今年の5月14日にお披露目できました。
めぐるり
多くの方に知ってもらい、実際に足を運んで、ヴォーリズの想いを感じてほしいなと思いました。今後は、どのように活用されていくのでしょうか。
辻さん
10月12日に一般公開がスタートします。これまでの歴史を常設展示する予定です。あと、素敵な雰囲気なので、希望者がイベント等をできるように調整中です。近くに、ラ・コリーナもありますから、その流れで多くの方に来てもらえたらと思っています。近日中にホームページやチラシが完成予定なので、見ていただけたら嬉しいです。
ヴォーリズとの縁
めぐるり
辻さんはツッカーハウスの保存活動をされたり、ハイド記念館長をされたりと、ヴォーリズとご縁が深いのかなと思うのですが、いつ頃からなんでしょうか。


辻さん
私の両親が近江兄弟社で働いていたんです。父は総務の仕事をしていました。母は公立の小学校の教師だったので、そういったお手伝いをしていたり。ヴォーリズ学園は、もともとヴォーリズの妻の一柳満喜子さんが「プレイ・グラウンド」といって子どもたちの託児所のような活動を始めたのです。その後、「清友園幼稚園」となり、今日の近江兄弟社学園へと発展していきました。私と姉はヴォーリズ夫妻が名付け親なんですよ。そこに通っていて、物心つくころからのご縁です。
めぐるり
そんなに深い歴史だったんですね。生まれる前からとは驚きました。辻さんが常駐されているハイド記念館も、思い入れが深い建物なのでしょうか。
辻さん
もちろんです。1931年に幼稚園として建設されて、その後はいろんな使われ方をしました。卒業生が成人式の撮影に使ったり、同窓会をしたり、思い入れが強い方がたくさんいらっしゃいます。木造で響きが良いので、ジャズのコンサートをしたこともありました。80人も来場して、大盛りあがりでしたよ。生徒たちは、吹奏楽部の練習に丁度いいみたいで使っていたんですが、耐震の問題があって、教育活動は難しくなりました。建物の一般見学は10月6日から正式にスタートします。市民の方や卒業生にもきてほしいですね。
めぐるり
10月からツッカーハウスとハイド記念館が本格的に始動ということで、今後の活用がとても楽しみです。ありがとうございました。
記事の関連情報
■ハイド記念館一般見学
10月6日〜
入館料:500円(高校生以下無料)
休館日:月曜日・年末年始(12月25日から月8日)
※その他臨時休館日あり
住所:〒523-0851 滋賀県近江八幡市市井町177
■ツッカーハウス(五葉館・チャペル含む)一般見学
10月12日〜
定員:25名(1回)
案内時間:1日2回(①10:00 ②13:30)
所要時間:約90分
開館日:木曜日・金曜日・土曜日
入館料:1000円(1人)※記念品有
※お釣りのいらないようお願いします
住所:〒523-0806 滋賀県近江八幡市北之庄町
※注:2023年9月27日時点での内容です