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対話をしながら子どもたちをともに育てていく

近江八幡の魅力を探求する
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対話をしながら子どもたちをともに育てていく

門脇 真斗Manato Kadowaki

特定非営利活動法人Since 理事
滋賀大学教育学部 学校心理専攻卒
在学中から不登校の子どもたちを支える活動に参加し、2022年にNPO法人化。近江八幡市安土町に拠点を構え、市内外からの子どもたちを受け入れている。

安土町を拠点に活動するフリースクール「Since」は「すべての子どもたちが健やかに育つ社会の実現」をビジョンに近江八幡市内外の不登校の子どもたちに様々な学び・体験を提供する活動で注目されています。立ち上げメンバーの一人である門脇さんに、その成り立ちや活動についてお話を伺いました。

新聞記事にもなったフリースクールに関する署名活動

めぐるり編集部(以下、めぐるり)
昨年、東近江市長のフリースクールに対する発言に対して、Sinceが発言撤回をもとめる署名活動を実施し新聞記事になりましたね。私もそれをきっかけに近江八幡市にもフリースクールがあることを知りました(京都新聞:https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1145122)。

門脇さん
はい。多くの反響をいただきました。決して東近江市長個人を攻撃する趣旨ではなく、社会に不登校への理解を深めてもらいたいという気持ちで発信しました。私個人の考えですが、問題や課題にぶつかったときはチャンスだと捉えているんです。大人の背中を子どもたちは見ています。生きていく上で、絶対、いろんな衝突ってあるので何かを学んでもらえたらって思います。

めぐるり
いろんな考え方があって、ときには衝突することもある。身近な大人がそれでも立ち上がっていく姿は、子どもたちにとって貴重な経験になりますね。そもそもの話になってしまいますが、どういう経緯でフリースクールを立ち上げたんですか?

門脇さん
学生時代に、ボランティア団体として立ち上げて、2022年4月にNPO法人になりました。当初は、教育や不登校の問題に関心がある学生たちが集まって、なにかできないかなぁって思っていて、知り合いの紹介でひまわり館(近江八幡市総合福祉センター)の研修室を借りてフリースクールをしていました。ただ、固定の場所がないと支援の幅が狭まり難しいなと感じはじめて、今の安土の1軒家に拠点を構えました。

「Since」に通う元気いっぱいの子どもたち

電気工作キットで遊ぶ子どもたち

めぐるり
Sinceに通ってくる子どもたちは、どんな子が多いのでしょうか。

門脇さん
人間関係で躓いた子、学校システムに合わなかった子など様々です。学年もバラバラなんですが、例えばゲームなどの共通項を通して、自然と仲良くなっていきます。

めぐるり
実際に拠点におじゃましてみると、みんな本当に元気いっぱいで仲良しでビックリしました。勝手なイメージで大人しい子たちなのかなって思っていました。

門脇さん
そうですね。学習の時間は集中しているのですが、遊びとなると元気いっぱいです。フリースクール事業の他にも、ナイトステイや放課後LABOといった事業も行っていて、いろいろな体験ができるようにしています。

めぐるり
みんなとても仲良さそうですが、ケンカとか上手く行かなかったりはありますか?

門脇さん
もちろん、口喧嘩程度のことはあります。学年がバラバラだったり、考え方がちがったりが当たり前の環境なので、それぞれの気持ちを聞いて、どうしたらお互いが良い状態になるか一緒に考える時間をしっかり取るようにしています。

めぐるり
保護者のみなさんは、どんなお気持ちなのでしょうか。

門脇さん
学習面や友達関係での不安はお持ちのようです。「家ではゲームばっかりなんです」とか「友達とはうまくやって、元気に過ごしているのかな」など。でも、Sinceでの学習の様子や日常の元気な姿をお話しすると、すごく喜ばれます。また、学習面や今後については、保護者さんと本人と相談しながら、個別に方向性を決めていくことも大事にしています。

めぐるり
学校との関係や進学についてはどんなケースがありますか?

門脇さん
フリースクールだけに通う子や、学校と併用している子など、人によって異なります。ただ、私たちとしては、フリースクールに行っても、学校に行っても、どちらも大丈夫だと思っていますし、本人の希望に合わせてサポートするというスタンスでいます。また、進学についても、近江兄弟社高等学校に進学されたケースもあります。本人のより良い将来のために、共に今後についても模索しています。

めぐるり
なるほど、本人の希望や保護者の気持ちを尊重しつつ柔軟に対応されているんですね。フリースクールを運営する中で、今の課題はどういったことがあるのでしょうか。

国・市・市民と対話をしながら子どもたちを育てていく

プログラム内容を相談するSinceメンバー

門脇さん
資金面は常に課題です。助成金や補助金を申請してもなかなか難しいことも多く、資金がないとどうしても子どもたちへのサービスの質が下がってしまいます。フリースクールの意義について国だったり市だったり行政ともっと対話が必要だと思っています。子どもたちを共に見守っていく側として、今後も対話を続け、子どもたちに対してより良い環境を提供していけたらと思います。

めぐるり
とても大事なことだと思います。私自身、新聞記事をきっかけにSinceにおじゃまさせていただき、元気で生き生きとした子どもたちと関わることができて、一緒に遊んだりもして、とても楽しい時間でした。市民のみなさんにも、Sinceのことや子どもたちのことを知ってもらって、一緒に遊んだりしてもらえたら理解が深まるのかなぁと。

門脇さん
まさにその通りで、今、定期的に「人生を聞こう」というイベントを実施しています。地域の方や面白い活動をしている大人に来てもらって、子どもたちに対して人生経験を語ってもらっています。その他にも、地域の農家さんの畑で芋掘り体験をさせてもらったり、少しずつ接点が増えてきています。子ども食堂とコラボも定期的に実施しているので、ごはんを子どもたちと一緒に食べるといった機会もあります。市民のみなさんには、ぜひSinceと関わってほしいです。

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特定非営利活動法人Since
<ビジョン>
すべての子どもたちが健やかに育つ社会の実現
<ミッション>
存在そのものが受容されている環境を作ること
生きる力を身に付ける機会を作ること
豊かな繋がりを生む出会いの場を提供すること

所在地
〒521-1351
滋賀県近江八幡市安土町常楽寺74
TEL:070-8931-0365